虎の事件簿

No.15 巨人のV9を許した日

1973年、阪神はペナントレース残り2試合のうち1勝すれば優勝というところだった。10月20日の中日戦の前々日、球団事務所に呼び出された江夏豊は、長田睦夫球団代表から信じられないような言葉を耳にする。

中日戦には勝たないでくれ

江夏が「どういうことですか?」と聞き返すと「勝つとお金がかかるから。これは監督も了承している」という答えが返ってきたという。

※上記内容は、江夏豊自伝「左腕の誇り」を参考にしています。


しかし、江夏は意地で中日戦に勝つつもりで名古屋に乗り込む。ところが、江夏は名古屋での中日戦の成績は芳しくなく、この日も三回に三連打されて2点をとられる。すぐさま味方打線が同点にするが、木俣のホームランで中日が再び勝ち越した。結局阪神は2−4で敗戦。
中日の先発星野仙一は次のようにコメントしている。

阪神に勝たしてやりたい気持ちの反面、うちもAクラスがかかっているから負けられない。投げにくかったし、勝っても、うれしくない1勝だ。巨人は8度も優勝していたのだから、明日は阪神に頑張ってもらいたい。

129試合を終わって、阪神と巨人が同率首位で並び、甲子園で最終決戦が行われることになった。


優勝をかけた巨人との最終戦は、雨天中止で1日延びて10月22日に行われた。
阪神ファンで埋め尽くされた超満員の甲子園球場。試合は阪神・上田二朗、巨人・高橋一三の先発で始まった。しかし、上田はニ回も持たずにKOされ、その後もリリーフ陣が失点を重ねる。点差がつくたびに殺気立つスタンド。最後の打者カークランドがファールを打つたびに、グラウンドに降って来るモノとヒト。
結局カークランドは三振に倒れ、阪神は0−9の完敗を喫す。この瞬間巨人のV9が達成された。


しかし、巨人ナインは胴上げもせず、試合終了と同時にベンチに向かってダッシュ。暴徒と化した阪神ファンが巨人ベンチを襲い、王、牧野コーチらに暴行を加えるという大醜態を演じてしまう。
その他、TV中継用カメラ破損、婦人警官、ファン、報道陣が顔や手に怪我するなど、大荒れの一日となった。


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