No.4 線審の煮え切らない判定にファン怒る
1953年7月23日対巨人戦(大阪球場)、渡辺省三と巨人・藤本英雄の先発で試合は始まった。巨人は五回表、樋笠一夫のソロホームラン、千葉茂のスクイズ、そして押し出し四球により3点を先制した。
五回裏、阪神は一死満塁のチャンスを作るが、バッター白坂長栄の放った打球はセカンドゴロとなる。しかし、巨人・千葉がこの打球を捕ろうとした位置が丁度一塁ニ塁線上の中間だったこともあり、一塁走者の金田正泰と交錯。千葉はどこにも送球できなかったため、金田は守備妨害と判定された。阪神側は抗議を行ったが、このケースでは守備優先ということもあり、判定は覆らなかった。
六回表、藤村隆男投手(藤村富美男の弟)が、千葉にデッドボールを与えると、これに対して千葉が激昂し、藤村弟に対してバットを投げつけた。
前の回で千葉と交錯した金田も外野から駆けつけるなど、場内は殺気だった雰囲気が漂うようになる。
七回表、巨人は与那嶺要のタイムリーで2点を追加。その裏阪神は、吉田義男、谷田比呂美、金田正泰、白坂長栄の4連打で2点を返して再び3点差の2−5とした。
そして試合は最終回阪神の攻撃を迎える。一死後、三船正俊投手の代打・田宮謙次郎が二塁打で出塁。そして続く金田は右中間へ大飛球を放ち、ヒットになると判断した田宮は本塁へ向かった。
ところが、打球を追った与那嶺のグラブにボールがおさまっているのを見た山下実線審はアウトをコール。そして、ボールは二塁に返球されて、ダブルプレーでゲームセットとなってしまう。
しかし、阪神は与那嶺がフェンスに当たって跳ね返った打球を捕球したと、この判定に激しく抗議。これに対し、判定に自信が無いのか山下塁審は他の5人の審判と協議を行うが、判定は変わらなかった。
それでも阪神は譲らず、抗議は約1時間続く。結局、阪神が提訴を条件に折れたが、線審の煮え切らない判定に怒ったファンは、その後も居座り続けた。
山下右翼線審「ダイレクトで与那嶺が捕ったと見た。位置においても出来るだけホームに近づいたと思う。」
松木監督「金田の打球はダイレクトで与那嶺が捕ったと山下線審が判定したので、私が聞いてみると、山下君は返事をしなかった。こんなあやふやな判定ではと思って深くつっこんでみたところ、与那嶺が"捕ったと思う"との返事。こんな審判などに大事な試合を任すことは出来ない。彼自身としてもセンターが捕ったかライトが捕ったかは、はっきり見ていなかったのであろう。私としては連盟に提訴して再試合を行うつもりだ。」
阪神は、この試合の翌日7月24日に文書でもって無効試合の提訴を行ったが、連盟会長は「審判員の判断に基づく裁定は最終のもの。その裁定に対して異議を唱えることは許されない。」として、阪神の提訴を却下した。
